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12月15日、某夕刊にCOP15の「非公式閣僚折衝で日本と欧州連合(EU)は14日、米国と中国が参加する新たな枠組みができれば、京都議定書の延長を容認する姿勢に転じた」と報じられた。(後刻判明したところでは、某紙の誘導質問報道のようであるが)
京都議定書には、最大のCO2排出国である米中が入っておらず、今や実効性に乏しい枠組みと言わざるを得ない。その京都議定書はそのまま延長し、米中は別の枠組みを新たに作るという。新たな枠組みは、米中の削減目標とそれへの努力義務を定める程度で、国際的な義務も目標未達時のペナルティもかからない緩い仕組み。これが、議長国が出そうとした案だそうだ。
そして、新聞報道によれば、日本側交渉責任者は、この「二つの枠組み」をと容認する姿勢を見せたとのことだが、私は信じない。
鳩山さんは言った。「すべての主要国が参加する公平で実効ある枠組み」、「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意」が、わが国の国際約束の「前提」だと。さきほどの案は、世界のCO2排出の4割を占める米中が実質は何の義務も負わない。目標未達でも排出権を買う必要はない。米国は中国が入らない枠組みにはビタ一文出さない。これが「前提」のどこを満たしているというのか。
もし、今の状況で−25%目標を掲げたままで「二つの枠組み」が実現したら、世界で排出権を買う国は日本だけになる。長年省エネ努力を続けてきた日本、世界のCO2排出の4%に過ぎない日本だけが、国民の血と汗で稼いだ貴重な金を世界中にバラまいて「空気」を買うはめになる。
また、2012年までの3年間で、先進国が途上国支援のため拠出する300億ドルのうち、「前提」付きだが、日本がなんと4割の約150億ドル(1兆7500億円、うち公的資金は1兆3000億円)を拠出するという。
お人よしにも程があるのではないか。外国は拍手喝采するが、腹の底では馬鹿にして笑うだろう。一方、わが国の国民は泣くだろう。国益を背負っている交渉当事者はこのことがよくわかっているはずだ。某紙はなぜ京都議定書の暫定延長をさせたいのか。
○ 交渉事の怖さ
さすがにこの「二つの枠組み」案は、先進国・途上国の双方から多くの反対が出て引っ込められたようだが、まだ安心はできない。
私は労働組合の経験が長いから分かるが、交渉当事者というのは特殊な精神状態に陥りやすい。「ここで決裂させてはならない」とか、「なんとかまとめよう」と思うと、冷静時には考えられないような安易な妥協に傾きがちである。言い訳じみた理屈をひねり出して、自ら交渉のハードルを下げようとする。
たとえば、「どんな形でもまず米中を入れることが大事。中身はあとから詰めればいい」とか、「日本で作った京都議定書を否定してはならない」、「日本が孤立することが最も国益に反する」など、妥協するときの理屈はいくらでも付けられる。
しかし、どれほど誘惑があっても、絶対に妥協してはならない一線というものがある。こと国益に関わる国際交渉では、何としても譲れない一線を堅持すべきである。今回の場合は、「日本だけが重い義務を背負うことはあってはならない」ということに尽きるのではないか。
交渉当事者は、どのような形であれ日本だけが高い目標、強い規制、重い負担を課せられるような文書には、絶対にサインしない。決して京都の二の舞はしないと信ずる。
○ 一皮むけば経済戦争、きれいごとではない
万一、わが国だけが重い義務を背負う事態となった場合、国際的に活動する大企業の多くは最早日本を見限るだろう。国際競争にさらされる中堅・中小製造業はつぶれ、そのシェアは途上国や米中にできた新たな工場が奪うだろう。そして、日本で作るよりはるかに多くのCO2を出して作った製品を今度は日本が輸入することになる。これをカーボンリーケージという。いったいどれだけの雇用が奪われるのか。想像するのも恐ろしい。
にもかかわらず、こと環境の話になると現実の生活者の視点を失い、うわべだけの美辞麗句を操る人がなんと多いことか。政治家の中にもそういう類がいるが、国民の生命と安全を守るという基本すら忘れたのか。
国の予算などほとんど使わなくても、エコ産業が興って新たな雇用が生まれるとか、新エネの買取制さえ入れれば、旧来の補助金の何倍もの経済効果があるなどと盛んに言う人がいる。
しかし、エコ産業が生み出す雇用は、今後失われる旧来型産業の従事者を吸収しきれるのだろうか。また、新エネの買取制は、確かに国の費用はかからないけれど、その代わりに国民や企業が新たな負担をしなければならないのではないか。
さらに言えば、太陽光パネルや発電用風車、EV(電気自動車)にしても、CO2を出しながら製造しなければならない。この時、排出量取引や環境税などのきつい規制が邪魔をして、結局海外で作った方がいい、となるのではないか。
温暖化対策に係る各種規制の推進論者は、くれまでどれぐらい具体的な試算をしてきたのだろうか。一度よく聞いてみたいものである。
わが国を支えるのは、地道に汗水たらして働く人々である。世界に冠たる省エネ技術もそうした人たちが産み出してきた。人々から職場を奪うような政策など、「国民目線」の政権がやるはずないと信じたい。
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