COP15閉幕によせて

 

 COP15は終わった。あまり内容のない政治合意文書について、「合意に留意(TakeNote)する」という議長提案を、異議が出ないことをもって承認するという非常にあいまいな集約結果をもって終了した。
  しかしながら私はこの結果を評価したい。
温暖化ガスの排出量が1位と2位である中国とアメリカ、合わせれば世界全体の排出量の40%を占める両国を、削減義務を伴う枠組みに入れられずに何が評価かといわれればその通りだが、私が言いたいのは、「京都議定書の枠組みを継続することで、−25%削減を約束させられる」という最悪のパターンだけには陥らなかったということである。この点について日本の交渉当事者が最後まで腰くだけしなかったということである。
  もともとCOP15で京都議定書のような拘束力のある文章を確認することは無理と早くから言われていた。
  それをその場の雰囲気で、政治合意文書と引き換えに京都議定書の暫定継続などに合意されたらたまったものではない。そんなことをすれば−25%の「前提」を全く無視したことになる。

 以下、今回のCOPの結果および交渉過程を見ていて、私が特に重要と考えたポイントを述べたい。

1. 前提は何一つクリアーしていない

 −25%を来年2010年の1月31日までの削減目標リストに登録するならば、当然「前提」つきでなければおかしい。
  主要国が参加する公平で実効性ある(すなわち検証可能な)枠組みの構築と、主要国が意欲的な目標で合意すること、これらがしっかり確認できるまで、日本の目標は「前提」とセットである。
何度も言う。COP15で「前提」は何一つクリアーしていない。

2. アメリカはそんなに良い国か

 米国は自国に強制力がかかる議定書にはサインしないことを国是としている。あくまで削減目標は米国独自に決めるのであり、結果的に目標に未達であっても不足分の排出枠を外国から買うこともなければ、ペナルティを受ける考えもない。米国はそんな国であり、オバマ大統領が誕生したからといって変わるものではない。

3. 中国はもっとひどいGoing my way の国

 政治的合意文書の長期目標(今世紀半頃)が「世界中の温暖化ガスを半減する」ではなく「大気温度の上昇を2%に抑える」としたのは何故か。
  ある研究所の試算では、今世紀半ばまでに世界中の温暖化ガスの排出を半減するためには、先進国の現在の排出量を100%削減しても足らず、途上国も今世紀半ばに到達するであろう排出量(対策無しの場合)の半分程度を削減する必要があるとする。
  中国が掲げる「GDP当たりのCO2を大幅に削減する」程度の目標ではとても間に合わない。(GDPが毎年8%の伸び=10年で1.9倍)
だから中国にとって、長期であろうと中期であろうと地球全体の排出量目標そのものに言及することは、自国の削減義務を言うことに他ならない。徹底して反対するのは当然のことであり、だから「2度の上昇」の表現に落ち着いたのだ。
  中国は温暖化対策のために自国の経済を制約する考えはこれっぽっちもない。むしろ子分の発展途上国を使ってCOP15の議事妨害を図ったことは各国周知の事実である。

4. EUは温暖化で金もうけ?

 温暖化ガスの排出量取引制度のためには制度加入国のキャップとなる排出量上限(削減目標)が絶対に必要。
  EUにとって1990年比−20%の目標などは、基準年のマジックや旧東欧諸国の加盟によって達成は楽勝であり、あとはEU−ETS(EU排出量取引制度)によっていくら稼ぐかである。
ポスト京都議定書で出来るだけ多くの国が削減義務を負うこと(カモが増えること)が望ましいのはいうまでもないけど、それが駄目でも日本というカモがいる。現行京都議定書の枠組み(米国や中国インドなど大量排出国は除外)を継続することだけでもやむなしと考えていたに違いない。
  決してEUはきれい事だけを考えているのではない。

5. 国連方式は今後も可能か?

 COPは国連の下の会議であり、決定には180を上回る国、地域の同意を必要とする。これが特定の国々の横暴を許すことになる。
  COP15は参加国とりわけ先進国と途上国間の意見の違いを明らかにした。これほど考え方に強い対立がある中で全会一致は空論でしかない。
  より多くの参加を求めながら全会一致にこだわらない会議体のあり方を求める時が来ている。合わせて、米国など強制力やペナルティの伴う決定には断固応じない国もある。

 日本だけがネギを背負ったカモにならない途はないのか、冷静に考えるべき時が来ている。